「腹膜播種に対する腹膜切除+術中温熱化学療法の保険収載に関する要望書」提出

2019年12月26日、厚生労働省に、RCJメンバーである腹膜偽粘液腫患者支援の会、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会、中皮腫サポートキャラバン隊、そしてRCJ(日本希少がん患者会ネットワーク)の4団体で、腹膜播種に対する腹膜切除+術中温熱化学療法の保健収載に関する要望書を提出してきました。諸外国のガイドラインには、すでに有効な治療法として推奨されていおり、保険診療も認められています。

宮内衆議院議員とともに、橋本厚生労働副大臣に提出した後、厚労省濱谷保険局長、森光保健局医療課長にも説明いたしました。

令和元年12月26日

厚生労働大臣 加藤 勝信 殿

腹膜偽粘液腫患者支援の会
代表 浦野 里美

中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会
会長 平田 忠男

中皮腫サポートキャラバン隊
共同代表 右田 孝雄

一般社団法人日本希少がん患者会ネットワーク
理事長 眞島 喜幸

腹膜播種に対する腹膜切除+術中温熱化学療法の保険収載に関する要望書

 平素より希少がん患者・家族のために多大なるご尽力をいただき、患者団体の立場より御礼申し上げます。腹膜偽粘液腫患者支援の会は、腹膜偽粘液腫患者と家族の交流と情報共有、そして安心できる医療体制や社会制度向上を目指して活動する全国患者団体です。中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会は、中皮腫を含むアスベスト疾患の患者・家族の交流や情報交換、また救済・補償の支援をする全国患者団体です。中皮腫サポートキャラバン隊は、腹膜中皮腫を含む中皮腫患者のピアサポートネットワーク構築を目指す患者団体です。一般社団法人日本希少がん患者会ネットワークは、腹膜偽粘液腫患者支援の会と中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会を含む希少がん団体17団体が現在参加し、小児がんを含む希少がんの治療開発の向上と患者・家族の生活の質の改善を目標に政策提言や情報公開、ステークホルダーとの連携・協働活動を行う団体です。

 さて、腹膜偽粘液腫と腹膜中皮腫は、希少がんの中でも患者数が少なく、がん診療連携拠点病院であっても、確立した治療法はないとして予後不良な疾患とみなし、姑息的な治療を試みるのみです。広範腹膜切除を伴う臓器合併切除術は、原発巣(虫垂や卵巣)と共に、播種のある複数の臓器と腹膜を切除し、腹腔内にある肉眼的に識別可能な病変を全て切除する手術であり、アメリカ、イギリスをはじめ西欧各国、日本を除くアジア諸国(台湾・シンガポール・マレーシア・インド・中国・韓国・フィリピン等)は、この手術を、腹膜偽粘液腫、腹膜中皮腫やその他の腹膜悪性疾患に対して行う唯一の根治術としてガイドライン[NCCN 2019, NICE IPG331, ESMO(Ann Oncol,2016,27,1386-1342), Latin American Guidelines 2018(EJSO, 2018,44,1800-1804) ]に示しており、保険診療として認められています。
 また、本邦においても上記疾患に対して、広範腹膜切除を伴う臓器合併切除術が行われ、諸外国と同様の有効な治療成績が示されています。
 一方、温熱化学療法(HIPEC)は、原発巣と転移した腹腔内の臓器や腹膜播種に対して、高温にした生理食塩水と抗がん剤を一定時間腹腔内に投与する治療です。
 アメリカ、イギリス、欧州、南米、中国、韓国、シンガポール、台湾、インド等のガイドラインには、温熱化学療法は腹膜偽粘液腫や腹膜中皮腫、卵巣癌、胃癌の腹膜播種に対して有効な治療法として推奨されており、保険診療も認められています。本邦においても腹膜偽粘液腫をはじめとする上記疾患に対して、直接効果や予後改善効果が高いエビデンスレベルで評価されており、2019年度中に日本ハイパーサーミア学会が温熱化学療法のガイドラインを提示する予定です。
 さらに、腹膜切除を伴う臓器合併切除術中に温熱化学療法(HIPEC)を組み合わせて行う包括的治療は、腹膜偽粘液腫はもとより、胃癌・卵巣癌・腹膜中皮腫などに対して、アメリカ、イギリスをはじめとする欧州各国、カナダ、中南米やアフリカなどで行われており、この包括的治療法が最も生存率改善に寄与する治療法であることが示されています。

 私たちは上記の諸外国同様、これらの治療が我が国でも保険適用されて患者が根治を目指せることを、強く希望しています。

 このたび、令和2年保険収載に向けて医療技術評価提案(保険未収載技術)「腹膜播種に対する腹膜切除+術中温熱化学療法」が、日本消化器外科学会より申請されました。こちらは、腹膜偽粘液腫や腹膜中皮腫の根治術として、治療を希望する患者が希少がんとはいえ多数おります。

 平成30年に閣議決定した第3期がん対策推進基本計画では、分野別施策の「がん医療の充実」として、希少がんも入っております。すでに海外で認められている腹膜偽粘液腫や腹膜中皮腫の根治術があるならば、がん医療の充実として、日本でも認めていただき、保険収載をいち早く実現してくださいますよう、私たちは強く要望いたします。

医療技術評価提案(保険未収載技術)「腹膜播種に対する腹膜切除+術中温熱化学療法」(申請団体名:日本消化器外科学会)の保険収載をいち早く実現すること。

以上